「オマル2 征服者たち」読了
2018-06-04


ロラン・ジュヌフォールの「オマル2 征服者たち」読了。

 SFはアメリカの専売特許ではない、とばかりに、伝統的なSF大国であったフランスから登場した名作と言っていいだろう。あまりに広大で果てしない世界「オマル」を舞台にしたロードストーリーとなっているのは、全作「オマル 導きの惑星」と同様だが、今回は3つのストーリーが同時進行するスタイルとなっている。それぞれのストーリーはこのシリーズの大きなできごととつながっているが、3つのストーリーは時期が同じという以外、接点を持たない。オマルの広大な世界では、同時並行的できごとが直接接触することすらないという趣なのだろうか。

 決して抽象的・哲学的・政治的で、難解な小説ではない。上質のエンタテイメントであり、同じフランスということで言えば、成功したリュック・ベッソンの映画とでも言えばいいのだろうか。かつてのSFの良いとこ取りに、現代社会への風刺を程よく添えた感じ。

 いずれにせよ読み終わるのが惜しいと感じさせてくれる作品。最後は旅の終わりと別れがあるのだが、どことなく清々しさを感じるのも前作同様。

 ちなみに全作の続編という謳い文句は少々抵抗がある。この作品は前作より数百年も過去の時代の話なのだから。いずれにせよ、他の「オマル」シリーズの翻訳が望まれる。もちろん、ヴェルヌの伝統を受け継ぐ他のフランスSFの翻訳も同様だ。
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