「オルフェ」を観る
2021-02-07


「オルフェ」を観る。1950年のフランス映画。

 監督はジャン・コクトー。メリエス以来のフランス伝統のトリック撮影(特撮というには素朴)を使った幻想的な作品。もちろん「オルフェウス」の神話を下敷きにしているが、何よりここでは死神である女性がいい。今で言う「ツンデレ」なのだが、ラストの選択が実にハードボイルド調でかっこいい。部下にも上から目線でつっけんどんなので、ラストの”mercy”が一層重みをましている。

 高級車(当時の)に乗った死神、その手下はバイクに乗った二人組、死神に対する裁判が殺風景な事務所的場所で、オヤジ数名で行われるなど、明らかに現代風(1950年の)な演出もあるが、それはそれでいい味を出している。フィルムの逆回しという古典的トリックが後に伏線になっていくなど、今からすればチープなトリックを逆手に取った演出も見事。

 こういう映画はモノクロに限る。事故のシーンもリアルではなく、事故の瞬間は見せずに音や象徴的なものを写すことで表現する奥ゆかしさは、今の映画からは失われた美徳かもしれない。

 レストアされたモノクロ画面はきりっと引き締まって美しさを取り戻している。劣化したアナログフィルムからの情報を引き出し、蘇らせるのには、デジタル技術はもはや必須だ。そのおかげで過去の名作がよみがえるのだから。
[movie]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット